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4日目 Kの日記 ちょっとゆっくり目の朝を迎えた。1階で朝食をとり、街へ出る。朝市をぶらついた。いかにも素朴で不格好な麦わら帽子を買う。3TD。帽子屋の主人にサンダルが買いたいというと、親戚の靴屋さんに連れていってくれた。伝統的な白い布のような衣服をまとい、つばのない白い帽子をかぶった老人が迎えてくれた。そこでこれぞチュニジアンモード最先端というべきサンダルを購入。残念ながら、伝統的なヌメ革製のサンダルは観光客だけのものらしい。チュニジア人の目にはビニール製のサンダルの方がずっと格好良く映るのだ。不本意ではあったが、それならと、そのビニール製のサンダルを購入してみた。3TDだった。(この後さっそく靴擦れになる。) しばらく散策して、昨日のカフェへ。そこはもうすでに多くのおやじたちでにぎわっていた。通りぞいに配置されたテーブルにずらーっと群がっているように見える。圧倒的な光景である。 昨日約束したとおり、カフェのお兄さんが、クサールの一つシェニニ(Chenini)行きのトラックが出る場所へと案内してくれた。そこにはシェニニと描かれた幌馬車のような形をしたトラックがあった。しかし、8人そろうまでは出発できない。乗合トラックである。30分から一時間近く待ったところで、どうやら出発することになった。中には私たちの他に3人のおじさんがすわる。走り出して街を出てまもなく、車が止まった。何事かと見ていると、みんな一斉にある店らしき建物に入っていった。すると、一人のおじさんが抱えきれないほどのバゲットをもって車に戻り、無造作にどさっと床においた。 車が走り出すと、となりのおじさんがバゲットをひとつとって私たちに差し出した。食え、というのだ。床においたパンを?とも思ったが、せっかくだからと、喜んでごちそうになることにした。ところが、私たちはそのおいしさに驚いてしまった。焼き立てらしくほかほかしていい香りがする。フランスの植民地であったチュニジアだから、パンがおいしいのは知っていたが、こんなにおいしいバゲットは初めてだった。目を丸くしておいしい、とおじさんに伝えると、彼はそうだろうと、満足げにうなずき、さらにとりだして勧めた。おじさんが家族のために買ったものではないのかと、ちょっと心配になったがその気持ちが嬉しかった。 途中、ひたすら何もない、ただ茶色い土だけが広がる景色がつづいた。すると、突然、そのなんにもないところでさっきのおじさんがパンをもって車を降りた。ようく見ると遠くに家らしきものが点のように見える。しかし、それ以外辺りには何も見あたらなかった。おじさんは手をふってその家のある方向へと歩いていった。 忘れられないほど美しい光景である。 シェニニに着く頃には私たち3人だけになっていた。日差しはかなり強い。運転手はまた2時間後にここに来るからといって行ってしまった。茶色い土の山壁に掘られた無数の穴。ベルベル人の住居跡である。確かに圧倒的だった。自分たちの土地を追われ、こんなところまで追いつめられたベルベル人たちのすさまじい歴史がある。多くのヨーロッパ系観光客の団体が山をぞろぞろと行進していた。静かな山間に彼等の笑い声のみがひびく。現在住んでいるベルベル人たちは、どうも観光客からお金をとって生活しているらしい。子どもたちは観光客からお金をせびり、大人たちは自分の住居に人を招き入れ、写真をとらせて多少のお金をもらう。ひとりの老人が太鼓をたたきながら、観光客を必死に自分の家に誘い込もうとさけんでいる。彼はあまり成功しているようには見えなかったが、叫ぶのをやめようとはしない。私たちはそんな彼らの姿に失望したような気持ちになった。子どもたちにもお金をあげる気にはならなかった。(これは後で気づいたことなのだが、考えてみれば、このシェニニを見せ物にして、一番金を儲けているのは結局アラブ人たちなのである。観光客をここへ運ぶ、それだけで利益が生まれる。レストランもホテルもないこの街で、ベルベル人は観光客の落とす大金のおこぼれももらえないのだから。) 観光客の一団があっというまに大きなバスで消えると、辺りがしーんと静まり返った。ただ、例の老人のうつ太鼓の音だけがむなしく乾いた音をならしていた。 私たちを迎えに来たトラックが見えた。帰り道、私たちのぼろぼろトラックは観光客を乗せた立派なジープに何台も抜かれた。それでもマイペースである。途中、さっき降りたおじさんを2人拾ってタッタウインの街に着いた。 片道たった0.73TDだった。観光客用のジープはその20倍はするのだ。彼らは焼き立てのパンの味も知らず、あの何もないように見えるところに住むおじさんの優しさも知ることはないのだろう。 |
![]() 靴屋さん ![]() カフェから通りを眺める。 ![]() カフェP.T.T ![]() シェニニ行きのトラック ![]() シェニニの風景 ![]() シェニニ |
