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12日目 Brussels Kの日記 ついに、最後の朝が来た。早朝、ペンションに支払いを済ませ、バックパックを背負って出発。最後まで宿屋の女主人は無愛想だった。街の方へ向かい、朝食のとれそうなカフェを探す。パンのおいしそうなところを選んだ。チュニジアでの最後の朝食。チュニジアのカフェオレとクロワッサン。ホテルで出されるバゲットとダットジャムの朝食とはひと味違う。既にヨーロッパに半分足を踏み入れたようだ。ひととき、これまでの旅行の話で盛り上がる。数時間後には、私とUはこの国を出ているはずだった。 すぐに出発の時間はやって来た。我々2人は空港へのタクシーを拾った。Eへ別れを告げ、タクシーは空港へ向かって走り出す。後には不安げなEがぽつんと残された。彼女はひとりで大丈夫だろうか? 空港まではだいたい20分ほど。チュニスの街から出るよりも便利なぐらいだ。だから、最後の数日は決まってシディ・ブ付近に滞在することにしていた。今回はちょっと計算がくるったが・・・距離的にはたいして変わらない。 簡素な空港に再び戻ってきた。残りのディナールの使い道を考える。海外ではほとんど換金は不可能だからだ。ボーディング・パスを受け取り、とりあえず、スタンドでコーヒーを一杯。あとは新聞と雑誌を買う。免税店はともかく、土産物屋にもろくなものがない。これで、ほとんどのディナールを使いきってしまった。 残りの時間は周辺をぶらぶらして過ごす。これでもチュニジアでの最後の貴重な時間だ。 飛行機に乗ると行きの嫌な記憶が蘇った。相変わらず小さな機体。今度こそは揺れないことを願う。祈りが通じたのか、帰りはあっけないほど快適な飛行だった。ほんの2、3時間後にはUと私にとって馴染み深い土地、ブリュッセルへと到着。二人が二年前に出会った街である。 電車で20分ほどで空港から市内へ到着した。まだ頭がヨーロッパの景色に馴染んでいないのを感じる。世話になっている友人宅へまっすぐ帰った。みやげとして赤い小さなガゼルのタピを渡す。旅で知った「ガゼル」という動物もすっかり親しみのある存在に変わっていた。しばらくチュニジアの話をした後、部屋へ戻って荷物の整理をする。二人とも旅が終わった後にいつも味わう妙に重たい気分になっていた。 |
![]() ブリュッセルのピタやさんとサミール。 5時ごろだろうか、夕飯を食べに街まで出かけることにした。2週間ぶりのブリュッセルの街には未だ強い違和感を感しる。どうも心はまだチュニジアに置いてきたまま、体だけがここに帰ってきてしまったようだ。たった数時間という時間は旅の清算には余りにも短すぎる。何と言ってもちょっと前までまだチュニジアにいたのだから。 以前からなじみのピタ・パンのサンドイッチを売る店に立ち寄る。店で働く青年、サミールはチュニジアからの移民だった。彼は私を見つけ、仕事の手を休めていつものように手を差し出した。笑顔で握手を交わすのが彼の挨拶だった。最近はどう?と深い意味もなく聞いた彼に、待ってましたとばかりにチュニジアに行って来たことを話した。彼は一瞬驚いたが、前以上の笑顔で「どうだった?」と尋ねた。彼が私たちのためにサンドイッチをつくるすこしの間、チュニジアの話で盛り上がる。彼の家はチュニスである。私が知っているだけでも3年はこの店で働いている。たった2、3時間の距離だと言っても彼らにとってはそう簡単に帰れるところではないのだ。 Uと外のテーブルについてサンドイッチが運ばれるのを待つ。サミールが来て、飲み物は?と聞いた。私たちはふざけて、メニューにはないボガを注文した。彼はちょっと考えて、店に戻っていった。しばらくして、別の男の子が飲み物を運んできた。なんと、彼が持ってきたのは本当にボガだったのだ。 私たちは驚いて店内のサミールの方を見た。サミールはただ笑顔を返しただけだった。 倉庫からわざわざ探してきてくれたらしいちょっとぬるいボガでチュニジアに乾杯した。気がつくと外はいつのまにかすっかり暗くなっていた。このサミールの粋な計らいに私たちのチュニジア紀行は今度こそ本当に幕を閉じたのだった。 |
